笹原さんの工場では水揚げされたほたてを、その日のうちに凍結する。ほたての旨みを逃がさないうちに、スムーズに凍結することが重要だ。
ほたては殻ごと工場に入れて、2度洗浄する。その後蒸して殻から身を外し、冷却装置を使って一気に10℃以下まで冷やす。冷却するときは滅菌海水(紫外線を使用して滅菌した海水)を使う。10年程前までは真水や塩水を使っていたが、それだとほたてから旨みが流出してしまい、どうしても水っぽくなってしまった。滅菌海水のほうがほたてに旨みを残したままにすることができる。
「蒸し時間もかなり研究して、どうにか適切な時間に辿り着いた」
ほたては蒸してから殻を剥く。蒸し時間が長いと、殻から身が剥がれやすくなって作業性が良いが、旨みが抜けてしまうし、硬い食感になる。味を重視して、蒸し時間をできるだけ短くしようとしたが、あんまり短いと加熱することによって出るほたての良い風味も出ない。何度も調整して、旨みが抜けずに、ほたての香りも引き出せる今の蒸し時間に決まったが、それも季節やほたてのサイズによって微妙に調整しているという。
「これでかなり味に深みが増し、食感も柔らかく、ほんとうにおいしくなった。このころから従業員もよく工場のほたてを購入して帰るようになってね」そう笹原さんは顔を綻ばせた。従業員からの評価は、紛れもない真実だ。