第1話 

酸素たっぷりのきれいな水の中で元気に泳ぐうなぎ

日本一の鰻の名産地、鹿児島。顔が見えるキッチン。のうなぎも、鹿児島県、大隅半島の東部に位置する志布志にある養鰻場で育てられています。

話を聞いた人

うなぎの生産者 株式会社 日鰻(にちまん) 山田社長

うなぎの赤ちゃん シラスウナギ

うなぎの養殖は、うなぎの稚魚であるシラスウナギの漁から始まります。毎年12月ごろから、シラスウナギは九州や愛知、静岡などの河川にやってきて、漁が解禁されます。ニホンウナギは絶滅危惧種として指定されているため、許可が下りた漁業者のみが漁を行うことができ、その漁獲量も厳しく制限されています。

うなぎの赤ちゃん、シラスウナギ

うなぎの養殖の流れ

株式会社 日鰻(にちまん)では、そのシラスウナギから成魚のうなぎになるまでを育てています。

約5~6㎝のシラスウナギは、まず“元池“と呼ばれる30坪程度の小さめの池で、大事に育てられます。そこから約ひと月程度で、クロコと呼ばれる割り箸ほどの大きさになってから、いよいよ”外池“と呼ばれる100坪程の大きな池に移されます。

ハウスのなかにうなぎの養殖池(外池)があり、水質・水温などが管理されている。

外池に移されたうなぎは、定期的に大きさの選別をされ、早く大きく育ったうなぎから出荷されていきます。大体その期間は半年から1年ほど。成魚になるまでに1年もかからないうなぎは、新仔うなぎとも呼ばれ、身が柔らかくおいしいのです。

すべてはきれいな水から。高濃度酸素水を使った養殖

うなぎ養殖(養鰻)が盛んな鹿児島のなかでも、日鰻の養殖方法で特に特徴的なのが、養殖池に使われている高濃度酸素水です。

ここ志布志にある日鰻のすべての池は、飲料用として飲めるほど、清涼な地下水を使っています。その水を高濃度酸素溶解装置を使用して、常に水の中の酸素量が一定以上になるようにしています。

勢いよくエサを食べるうなぎ。元気な証拠です。

水の中に酸素が多いと、池の中のヘドロやフンなどの汚れを食べる好気性バクテリアが増え、きれいな状態の水に保つことができます。

きれいな水だと、うなぎはストレスが減り、元気が出るのでエサをよく食べます。そして、たくさんエサを食べるうなぎはすくすくと大きく育ち、結果としておいしいうなぎが育つのです。

※高濃度酸素水を使用した養殖方法は、うなぎの加工をしている株式会社 大新と共同で開発し、特許を取得しています。

養鰻業界をリードする取り組み。スタートのきっかけは?

このような高濃度酸素水を使った養殖は、養鰻業界のなかでも異例のことでした。なぜ、このような取り組みを開始したのか、山田社長に伺いました。

熱く語ってくれた山田社長

「うなぎの養殖は、2008年から始めました。私自体、元々うなぎの養殖はやったことがなく、全くのド素人でした。養殖をやっていると、なんでだろう?と思うことがたくさんあったのですが、それを科学的に説明できる人がいなかったんですね。なので、自分で水質や、酸素濃度、どういうときにうなぎがエサをたくさん食べるのか、など、とにかくデータをたくさんとりました。すると、段々うなぎを健康においしく育てるためにはどうしたらいいのかが、わかるようになってきました。酸素濃度のことに気づいたのも、このためです」

すくすく育った出荷前のうなぎ

今、うなぎは日本の絶滅危惧種に分類されるほど、量が減ってきています。

「うなぎを人工孵化から育てる完全養殖は研究が進められていますが、まだ商業化できるほどではありません。ですが、こういった新しい技術は積極的に取り入れていきたいと考えています」

業界のなかでもパイオニア的な技術に取り組む背景には、山田社長の論理的な考えと、未来の養殖業に向けた想いがありました。

お客様へむけて

「こうして少しでもうなぎに興味を持ってもらい、日本の伝統的な歴史ある食文化であり、資源でもあるうなぎを末長く守っていきたいと、皆さんも思ってもらえればいいなと思います。うちのうなぎを食べたときに、また食べたい、と自分でも思うんです。おいしいんです。ぜひ食べてみてほしいと思います」

最後に

皆さんが普段食べているうなぎについて、この記事で少しでも興味を持っていただけたでしょうか。次話では、おいしいうなぎの蒲焼きを作る、株式会社 大新についてご紹介します。ふっくらとして香ばしい、ひと口食べると思わず頬が緩んでしまうような、うなぎの蒲焼き。そのおいしさのコツを探ります。

顔が見えるお魚。

日本の漁業を取り巻く環境は刻々と変化しています。そんな中、日々心を込めて生産に励まれている生産者の方々を応援したい。また、食べていただく方々にその良さを知っていただきたい。そんな思いから「顔が見えるお魚。」では国産の水産物に限定してお取り扱いをしています。