青森県陸奥湾産帆立磯部天 第1話

ほたての旨みと海苔の風味が豊かな磯部天

日本一の養殖ほたての漁獲量を誇る青森県。

津軽半島と下北半島に囲まれた陸奥湾は、八甲田山や白神山地から流れる川を伝って豊富な栄養分が注がれる。

それにより、ほたてのエサとなる植物性プランクトンが豊富で、ほたて養殖をするには恵まれた環境だ。

今では陸奥湾に面する港の多くで、養殖ほたてが水揚げされている。

今回は、水揚げしたほたての加工(殻剥きなど)をしている成邦商事株式会社の笹原さんにお話を伺った。

ほたてと共に43年

創業者を父に持つ笹原さんは、18歳のころからほたての加工業に携わっている。

「当時の工場は今とは全然違った。冷凍する設備なんてなくて、冷蔵での流通が普通だった。工場ができたのはそのころで、水揚げ後ボイルしたほたては氷詰めし、鉄道の貸車で築地市場に出荷していた」

今でこそ、ほたてなどの海産物は水揚げされ、洗浄、加熱、凍結、梱包といった工程を機械化し効率化しているが、当時はそのほとんどが手作業だったという。

「一番変わったのは、衛生面。HACCP(ハサップ)認証を取得するころから従業員の服装などは大きく変わった。そして機械。急速冷凍機が入って、その次はトンネルフリーザー(ベルトコンベア式の凍結機)、包装する機械。作業性は大きく上がった」

ほたての旨みを逃がさない技

ほたての旨みと海苔の風味が豊かな磯部天

笹原さんの工場では水揚げされたほたてを、その日のうちに凍結する。ほたての旨みを逃がさないうちに、スムーズに凍結することが重要だ。

ほたては殻ごと工場に入れて、2度洗浄する。その後蒸して殻から身を外し、冷却装置を使って一気に10℃以下まで冷やす。冷却するときは滅菌海水(紫外線を使用して滅菌した海水)を使う。10年程前までは真水や塩水を使っていたが、それだとほたてから旨みが流出してしまい、どうしても水っぽくなってしまった。滅菌海水のほうがほたてに旨みを残したままにすることができる。

「蒸し時間もかなり研究して、どうにか適切な時間に辿り着いた」

ほたては蒸してから殻を剥く。蒸し時間が長いと、殻から身が剥がれやすくなって作業性が良いが、旨みが抜けてしまうし、硬い食感になる。味を重視して、蒸し時間をできるだけ短くしようとしたが、あんまり短いと加熱することによって出るほたての良い風味も出ない。何度も調整して、旨みが抜けずに、ほたての香りも引き出せる今の蒸し時間に決まったが、それも季節やほたてのサイズによって微妙に調整しているという。

「これでかなり味に深みが増し、食感も柔らかく、ほんとうにおいしくなった。このころから従業員もよく工場のほたてを購入して帰るようになってね」そう笹原さんは顔を綻ばせた。従業員からの評価は、紛れもない真実だ。

商品名:青森県陸奥湾産帆立磯部天
主品目名:帆立
産地:青森県陸奥湾
加工場名称:成邦商事株式会社
加工場住所:青森県大字八ッ役字芦谷268-1